イントロダクション 

陵平。1986年11月13日生まれ。
13歳の少年は、2000年9月30日22時10分に埼玉県新座市の自宅マンションから飛び降り、自らの命にピリオドを打ちました。

彼の部屋の机にはきちんとした字で書かれた反省文と、床には乱れきった字で書かれた遺書が残されていました。
直前まで家族と一緒に「欽ちゃんの仮装大賞」を見ながら笑い転げていた彼が、たった40分の間にどんな気持ちを感じ、どんな理由から死を選択したのか。
彼が帰ってくることはなく、いったいどんな意味があるのかと自問しながらも、死を決意するときの彼の気持ちを少しでも感じ取りたく、中学校関係者に質問を投げかけてきました。

9月29日、彼は学校で友人からハイチューをもらって食べました。そのことで学校で指導を受け、30日、死を決意する1時間前には担任からの電話を受けています。

「お菓子を食べたことを注意されたくらいで、なぜ」。
その気持ちは今でも変わりませんが、学校関係者との接触を続けるうちに、生徒の行動をすべてコントロールし、ルール違反や反抗の芽を徹底的につみ取る指導が浮かび上がってきました。彼らは口々に「荒れる学校にしないために」といいます。確かに生徒を縛り付けていれば、そしてそれがうまく行っている間は「荒れる」事はないかも知れません。

陵平のように「死を選択する」事は、ごくまれなケースなのでしょう。でも多くの生徒が、「先生に何をいってもムダだから」「いうことを聞くしかないから」と心を閉ざす、「緩やかな死」を迎えているのではないでしょうか。

私たちが9月29日の指導で何が行なわれたのかを知ることができたのは、1ヶ月後の10月31日のことです。学校側の心ない対応にくじけそうになりながらも、気持ちを奮い立たせることができたのも、親としての最後のつとめを全うしたいという意志からです。地域に密着した存在でありながら、学校がこれほど閉鎖的なものだとは、予想もできませんでした。

少しでも多くの方に陵平の「事件」を知っていただくことは、彼の望みにかなったことだと感じています。この情報が少しでも多くの方々のお役に立つことを願っています。

 


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